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7月17日(火)
『NONO』ロメル・トレンティーノ監督 Q&A
「子どもが希望を持てるような映画を撮っていきたい」

ロメル・トレンティーノ監督


 長編コンペティション部門への出品作『ノノ』は、フィリピンのスラム街で元気に暮らす少年トトと、彼を取り巻く人々を描く人間賛歌。上唇が裂ける先天性の障害のため、うまく言葉を発音できず、クラスメイトにからかわれることも多いが、トトは自分の思いを人々に伝えることに迷いはない。


 そんなトト役の少年アクシル・アエイオウ・サムソンの演技はプロはだし。長い掛け合い台詞も、ちゃっかり者の母親を諭すお小言も、観客にはリアルな少年の言葉として伝わってくる。「トト役はオーディションで選びました。アクシルは映画で描かれているようなスラム街に暮らす少年です。プロの子役のオーディションも再三行いましたが、トト役にはアクシル以外考えられませんでした。主役の3人の子役のうち、プロなのはバドン役のルセル・アブドラのみで、この映画の80%は素人です」とロメル・トレンティーノ監督。


 脚本を覚える作業は、アクシル少年のお母さんの手を借りて4カ月前から始めたが、撮影で、ここで泣きなさいとか、ここで笑いなさいというような指示をすることはなく、子どもたちの感情に任せたのだという。
 「撮影は常に一発勝負。機会を失することのないようにカメラは4台同時に回していました。ほとんどが1テイクで撮影され、2テイク撮ることは稀でした」


 トレンティーノ監督は、トトをはじめとする子どもたちの世界を描くことを通して、押しつけがましくない“問題提起”を行う。


 「トトのお母さん(アイアン・ガリグエス)が、日本語を知っているのは、スラムに暮らす多くが海外に出稼ぎに行くことを望んでいるからです。その行き先のひとつに日本もあります。彼女は生きるために学んでいるのです」。だからこそ日本でも上映したかったし、その希望がかなって嬉しいと監督は言う。釜山国際映画祭、ベルリン国際映画祭での上映を経て、ここSKIPシティ国際Dシネマ映画祭で日本初上映。これから来年にかけて10以上の国際映画祭での上映が決定しているのだそう。


 「フィリピンでは、子どもを扱った映画はたくさん撮られていますが、子どもが見ても楽しい映画は少ない。私はこれからも彼らが希望を持てるような映画を、子どもたちに向けて撮っていきたいと思っています」


 ちなみにアクシル少年は、昨年の12月に上唇の再手術を行い、今はスピーチセラピーに通っているという。「来年には問題なく話せるようになるでしょう」


 『ノノ』は、21日(土)11時より多目的ホールでも上映される。

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