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監督インタビュー vol.03

デジタルで撮影・制作された映像作品にいち早く焦点を当て、2004年にスタートして今年で9回目を迎えた「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2012」。新たな映像作家を見い出すメイン・プログラムの長編コンペティション部門で、将来が嘱望される世界各国の新進監督とともにノミネートされた国内3作品の監督に、それぞれ一問一答。

 

浅沼直也監督『Heart Beat』

「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2012」
長編部門(国際コンペティション)ノミネート作品

  

監督プロフィール

  

浅沼 直也

長野県出身。
脚本家・我妻正義氏に師事、若干19歳で深夜ドラマデビュー。
『えすけーぷ、風呂む』が第3回TSSショートムービーフェスティバルで準グランプリを獲得。
現在、仲間と共に映像制作団体「Altan Cinemas」を立ち上げ、活動を行っている。

 

  

――弱冠19歳で脚本家としてデビューされています。そのあたりの経歴から教えてください。

 

小学校のとき、クラスでひとつの物語を作るという授業があり、これがすごく楽しかった。今考えるとこの体験が大きくて、自然と脚本家の道を目指すようになった気がします。その後、映画学校に進んで、本格的に脚本を学ぶことにしたのですが先生が今村昌平監督の『復讐するは我にあり』の助手を務めた方で。同作が出来るまでの過程をこと細かく教えてくれたんです。そのとき、今村監督の脚本作りに際してのリアリズムの追求やこだわりにカッケーなぁと思い、さらに脚本作りに魅せられていきました。

  

――その中で、今度は監督にチャレンジしたくなった?

 

これまで5作が映像化されています。もちろん自分の書いたものが演出家の方によって形になっていくのはうれしいこと。ただ、一方で、書いた脚本が死んでいき、自らのヴィジョンで描いてみたいという欲求も高まっていきました。その中で、ようやく実現できたのが今回の『Heart Beat』です。

 

――作品はバスケ部のマネージャーでアルコール依存症の母を抱える高校生の佳代が主人公。母の面倒をみるため、彼女はマネージャーを辞め、バスケへの夢は幼なじみの浩二と勇太に託す。今を精一杯生きる彼女の想いを中心にした青春ドラマです。

 

知り合いにバスケットボールを実際にプレイする役者が何人かいて、“これなら本格的なバスケットシーンの撮れる映画が作れるのではないか?”というのがまずは出発点でした。また一方で、僕は自作では人間だからこそ感じる心の痛みや、そのときに抱く感情の揺れを描くことを大切にしたいと思っています。その二つが結びついて、佳代の直面した厳しい現実と儚い夢を見つめることで、青春の光と影を浮き彫りにする今回のストーリーが出来ました。

 

――クライマックスに用意されたバスケットシーンは力が入っていますね。

 

やるからには本格的なものにしたかった。役者さんには時間をつくってもらい、指導員の方についていただいて3ヶ月間、猛特訓を積んでもらいました。未経験の方もいたのですが、最後はみんな身も心もアスリートになってくれたと思います。実は最初は代々木公園のストリートからはじまって、等々力の体育館、最後は松戸のバスケットコートと練習場もステップアップしていったのですが、それをなぞるように役者さんたちも上達していってくれて(笑)。そのピークに、あのシーンを撮影できたのはほんとうに幸運でした。

 

――石橋杏奈さん、斉藤慶太さん、飯島英幸さんと主演組の若手俳優もさることながら、柳憂令さん、いしのようこさん、マギー司郎さんと脇役も多彩な役者が顔をそろえました。

 

やる気があるのかないのかわからない先生役を考えたとき、真っ先に頭に浮かんだのが柳さんで、一方、アルコール依存症の母親役を考えたとき、病気ではあるんですけど品の残せる存在でいてほしいと思って、このときも1番最初に頭に浮かんだのがいしのさんでした。それで思い切ってお願いしたらお2人ともご了承くださって、うれしかったです。あと、マギーさんは僕の先輩にお弟子さんがいて。その伝で、ノーギャラで出演してくださいました。おかげで映画に厚みが出たのは確かなので、お三方にはほんとうに感謝しています。

 

――最後に今後の目標などあったら聞かせてください。

 

東京から少し離れた地方都市の話ですので、たぶん川口エリアも比較的近いところがあると思うんですよ。ですからまずは今回の映画祭でどう受けとめられるのか楽しみにしています。そのあとは『Heart Beat』を劇場公開につなげたい。あと、現在、次回作を構想中。いまはスカバンドを主人公にした音楽映画を作りたいと思っています。



(インタビュー・文章: 水上 賢治)

  

『Heart Beat』  〔2012年制作/113分〕

浩二と勇太は幼い頃からの親友。高校でバスケットボール部に所属しているが、試合はいつも連敗して、すっかり負け癖が付いている。そんな中、やはり幼なじみでバスケ部のマネージャーをやっていた佳代がアルコール依存症で入院していた母親と暮らすため退部してしまう。一方、バスケ部は強豪・茅ヶ崎東高と交流試合を行うことになり、浩二と勇太は練習に励む。そんな二人だが実はどちらも佳代に思いを寄せていた。気持ちを表せないでいるうちに、性同一性障害に悩むクラスメイト・みなみが佳代に告白してしまう。みんなの気持ちが揺れ動く中、試合の日は迫ってきていた…。

©2012 「Heart Beat」製作委員会

 

○出演:石橋杏奈、斉藤慶太、飯島英幸、來河侑希、吉岡祐、マギー司郎、いしのようこ、柳憂怜

 

映画祭2012ガイドPDFダウンロード

 

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