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【インタビュー】国際コンペティション『彼女はひとり』中川奈月監督

 

『彼女はひとり』

中川奈月監督インタビュー

  

――プロフィールを拝見したところ、立教大学卒業後にニューシネマワークショップに進み、それから再び立教大学の今度は大学院映像身体学研究科に進まれ、現在は東京藝術大学大学院に在籍中。傍からみると映画を学び続けている印象です。

 

実は、そんなことなくて。映画を勉強し続けているというよりは、自分が映画を作ることができる帰属場所を探していたらこうなってしまったんです。東京藝術大学大学院に進んだのも、今回入選した『彼女はひとり』がほぼ自主体制でとった作品で。しばらく自主での制作は大変なので避けたいなと。ただ、映画は作りたい。それで東京藝大にいけば授業の一環で作れるなと思い、受けてみたら、運よく入ることができました。映画を絶対に作れる環境を求めていったら、結果的にいろいろなところをわたり歩くことになってしまいました(苦笑)。これも現在の来年3月の院卒までと思っています。

 

――初めの立教大学のときから映画を作ろうと?

 

いいえ。立教大学は文学部でした。このころは、完全に映画を観る側。映画が大好きだったので、映画サークルには入りましたけど、あまり活動がよく理解できなくてすぐに辞めてしまいました。でも、就活に入ったとき、やはり映画関係の仕事に進めればなと。それで、ショートショート フィルムフェスティバルのインターンをやったんです。このとき、事務局の方に、「20代は好きなことをやっていい」という言葉に背中を押されて、じゃあ1度映画を作ってみようと、ニューシネマワークショップで学ぶことにしました。入って半年ぐらいで、初めて10分ぐらいの短編を作ったんですけど、講師の方に誉めていただいて。じゃあ、続けてみようと。それでもう半年続けたら中編ぐらいの作品を作れる権利があったんですけど、プレゼンで落ちてしまい…。どうしようかと思っていたとき、手伝うことになったのが、<SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2015>で入選した藪下(雷太)さんの『わたしはアーティスト』で。そこで改めてまだまだ映画を作りたいと思って、今度は母校の立教大学の映像身体学科に進み、篠崎誠監督のもとで学ぶことになりました。

 

――その『彼女はひとり』は、立教大学映像身体学科での修了制作作品になります。でも、出来るまでは少し回り道があったみたいですね?

 

はい。いざ、修了制作作品を撮らなければいけないという段階になったとき、脚本がまったくいいものが書けなかったんです。当初、好きなホラー映画の脚本を書き上げたんですけど、篠崎先生から「これではホラーっぽい、雰囲気だけの映画で終わっちゃうよ」と言われてしまい……。そうこうするうちに完成させるには絶対間に合わない時期にまで来てしまって、結局、休学届けを出すことにしました。以降、休学中にも関わらず、毎週のように大学にいき、篠崎先生に脚本を見せる日々。その中で、篠崎先生が「これはすごくいい、これでいこう」とおっしゃってくれる脚本がようやく出来て、それが『彼女はひとり』になりました。

 

――ある過去のトラウマを抱えた女子高生の澄子が主人公。自殺未遂を起こし、どこか人生を絶望視している彼女が、執拗なぐらい学校の女教師と交際をしている幼なじみの男の子、秀明を脅迫し追い詰めていく。きれいごとだけでは語れない人間の心に潜むドロドロとした感情に切り込んでいます。

 

もともとはニューシネマワークショップ時代に書いたものがベースです。これまで観てきた映画で、女の子が怒りに駆られて暴走するといった類の作品をあまりみたことがない。そういうものができないかと思いました。ただ、これだけだとやはり篠崎先生に指摘された通りで、「雰囲気だけの映画」になってしまう。そこで、やはり自分の個人的な感情や思いをこめないとダメだなと。上辺だけではダメ。自分という人間の感じている世界を恥ずかしくても出さないとダメだと。そこで、私がこれまでの人生で少なからず感じてきた、例えば、自分はその人たちのことをすごく愛しているのに、その人たちが愛する人の中に自分が入っていない孤独、知人同士がいとも簡単につながっていくのに、そこから自分がいつの間にか外されていた寂しさなど、そういった感情を澄子に込めていったら、物語ががらっとかわったんです。

 

――澄子が強烈で。容赦なく秀明をやりこめていく。その描き方がまた妥協がない。ちょっと眉を顰めたくなるシーンもいくつかありました。

 

なんでもうまくやりすごして、生きていく男子に対する、不器用にしか生きられない私自身のやっかみや嫉妬が前面にでている気がします。いじめのシーンなどを妥協なく描けたのは、もちろんきれいで夢のある世界を描くのも映画ですけど、一方でできればあまり見たくない人間の汚い部分を見せるのも映画かなと。そこに躊躇はなかったですね。

 

――ただ、澄子の自分の存在を認めてほしいという承認欲求の高さは、今どきの女の子に通じるところでリアリティがある。それゆえ、通常だととても好きになれないタイプのヒロインですが、同世代の女の子で彼女に共感を覚える人は意外と多いかもしれません。

 

澄子には私が今、生きる上で感じている不平や不満を託しているところがあって。恥ずかしいんですけど、けっこう言いたいことを包み隠さずに言い切ったかなと(笑)。そこに共感してくださったかどうかは定かじゃないんですけど、これまで見てくれた中では、確かに同世代やちょっと年下の女の子からいい反応が返ってきていて、ちょっとほっとしています。

 

――澄子を演じたのは福永朱梨さん。目力のある俳優さんで説得力のある演技が光りました。

 

主役は悩みどころでした。というのも、脚本の段階から篠崎先生に「これはそうとう(演技の)うまい子じゃないと成立しないよ」と言われ、自分でも確かにと。それでオーディションをしたんですけど、福永さんが来たとき、彼女だと。すでに澄子のイメージでオーディションに臨んできてくれていて、福永さんなら任せられると思いました。澄子は悪女なんですけど、そこに至った経緯にはある出来事に対する良心の呵責がある。だから、いじわるな言葉を言うのがハマる人であってほしいと思う一方で、瞳の奥に孤独と悲壮感を漂わすような人であってほしかった。福永さんはその感じがすごく出てた気がします。

 

――一方、いびられまくられる(笑)秀明役は、金井浩人さん。彼は『きらきら眼鏡』への主演も決まっている若手注目株です。

 

金井さんもオーディションだったんですけど、秀明役に求めたのは純朴さ。本人には失礼なんですけど(笑)、金井さんはいまどきのイケメンとはちょっと違うというか。かっこよさもあるんですけど、どこかあか抜けないところがまだあるような感じで。秀明にぴったりと思ったんです。というのも、女性教師と付き合っているという設定を考えたとき、クラスのヒエラルキーの上位にいるイケメンだと、なんか遊び感覚の恋愛で収まってしまう。でも、そうじゃないどちらかというとクラスでも中堅どころというか。目立つわけでもないけど、目立たないわけでもない。堅実なタイプの男の子の方が、教師との間に純愛が生まれるのではないかと。実際、秀明の女性教師に対する愛は本気で、真剣に交際している。許される恋じゃないけど、真実の愛を注ぐような佇まいで秀明にはいてほしかった。そうすることで、澄子の怒りの導火線にも火がつくというか。軽い気持ちよりも、しっかりとした関係のものを壊したくなるのが復讐ですから、澄子にとっては本気のターゲットとなる。一方、秀明という人間にとってはよりダメージが大きくなる。そうすることで、受け手により二人の感情が鮮明に伝わるのではないかと思いました。

 

――確かにそうかもしれません。

 

金井さんは、とりわけ澄子に翻弄されていく感じがすごくうまく表現してくれたなと思います。いじわるされて脅迫されて、それに対して反感を持ちつつも反抗しきれない。弱いところを突かれて、たじたじになる。そのあたりが表情やしぐさから滲み出ていたと思います。

福永さんと金井さんの掛け合いは現場でみていても最高でした。福永さんがブスブスと刺さることを言って、金井さんが弱っていく。自分でセリフを書いているんですけど、現場で見ていると、「そこまで言うか!」といった具合で。自分が書いたセリフとは思えないぐらい突き刺さってくる。シーンとしてはシリアスなんですけど、二人のやりとりをみているのはどんな化学変化が起きるのかすごく楽しみでした。

 

――撮影は、黒沢清監督をはじめ多くの映画監督が信頼を寄せる芦澤明子さんですね。これはどういった経緯で?

 

脚本が出来た段階で、篠崎先生が「これはプロの撮影監督でいってみないか」といわれたんです。それで先生が「中川さん、黒沢(清)監督好きだよね。じゃあ、芦澤さんにまずいってみようか」と(笑)。「えっ」と思いましたけど、頼めるものならと、ダメもとで脚本を読んでいただいたら、「やりましょう」と言っていただけたんです。芦澤さんには感謝の言葉しかないです。クランクインする前は、もうちゃんとできるのか不安で不安で。すごくナーバスになって、気づくと涙をこぼしていたりしました(苦笑)。それぐらいプレッシャーを感じていたんですけど、芦澤さんはリハーサルのときから、「あなたの好きなようにやりなさい、私はあなたの味方だから」といってくださって。撮影に入っても、いろいろとやらかしたんですけど、最後まで私を見捨てないで付き合ってくださいました。ほんとうに感謝しても感謝しきれません。

 

――芦澤さんとの仕事はプロの現場を経験したことになると思うのですが、いかがでしたか?

 

私は監督としての映画作りの経験がほぼありませんでした。はっきり言ってしまうと、こういうシーンにしたいという考えはあるんだけど、そのシーンを最良のものにするとき、どうカット割りして、どういうステップをたどればそうなるのかが想像できない。芦澤さんとご一緒して、こうしないとシーンは成立しないということを初めて勉強させていただいた気がします。正直なことを言うと、監督として私は立てていたのかな?とすごくへこみました。

 

――そういった経験を経て、いま完成して思うことはありますか?

 

修了制作作品なんですけど、休学中はほぼ自主体制。ポスプロのこととかまったく考えずに、とりあえず撮影に入り、撮り終えて。休学中なのに毎日のように大学に行って、ほとんど編集もしたことがなかったので、学びながら編集をして。それからカラコレ、整音どうしようかとなって、ようやく去年の3月に完成。右も左もわからないままはじめて、無我夢中で完成させた感じで、計画もあるようでないようなものでした(笑)。それがこうして曲がりなりにも作品になって、ほんとうによかったです。いまはほっとしています。

 

――でも、芦澤さんの参加といい、金井さん、福永さんの出演といい。すごい求心力ですね。

 

ほんとうに自分でも信じられません。というかあまりに幸運すぎて、運を使い切ったような気がして怖いです。

 

――今回、国際コンペティションで唯一の日本映画になります。これはどう受け止めていますか?

 

すごく光栄ですけど、同時に緊張しています。うれしいのはうれしいんですが、日本作品が私のだけというのは気が引き締まります。海外の監督と比較される中で、自分の作品に国際的な魅力が出ているのかどうか。海外の人がみて、どうなのかをすごく知りたいです。厳しい目でみてもらえると思うので、いろいろな意見が聞ければと思っています。

  

『彼女はひとり』の詳細はこちら≫

  

(取材・文・写真:水上賢治)


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