ニュース

【デイリーニュース】vol.02 『旅愁』呉沁遥監督 Q&A

真実の愛とは何か、ということをずっと考えていました

(左から)『旅愁』の朱賀さん、呉沁遥監督、呉味子さん王一博さん

 

「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2019」開催2日目、いよいよ各コンペティション部門の上映がスタートした。国際コンペティション部門出品作『旅愁』は、日本に暮らす中国人青年たちのやるせない思いを描いた日本・中国合作映画。上映後のQ&Aには、監督、脚本、編集の呉沁遥監督、出演者の朱賀さん、王一博さん、呉味子さんが登壇した。

 

東京で中国人旅行者向けの民泊を営む李風(朱賀)は、近所で絵の個展を開いていた画家の王洋(王一博)と出会って親しくなり、民泊の仕事を手伝ってもらうことを条件に同居生活を始める。そんなある日、王洋の元カノ・ジェニー(呉味子)が中国から泊まりに来ることに。さまざまな問題を抱えた彼女と過ごすうち、3人のあいだに微妙な関係が生まれるのだが……。

 

呉監督は2015年に来日、立教大学大学院で映画演出を学び、修了作品として本作を製作した。来日のきっかけは、同大学の現代心理学部映像身体学科教授でもある万田邦敏監督の作品だったという。 「万田さんの『イヌミチ』(14)という作品を観て、演出がすごいと思いましたし、尊敬しています。ジェニー役に対する演出は、ゼミで学んだようにワクワクする感じにしたかった」

 

呉沁遥監督

 

3人の主人公には、演技経験の全くないアマチュアの俳優を起用している。ちょっとジョニー・デップを思わせる、李風役の朱賀は、監督と同じ立教大学の友人だという。「国際経営学科を卒業してから、中国で工業関係の会社で働いています。初めての演技なので、すべて監督の指導のもとに演じています。監督は優しかったです(笑)」

 

李風役の朱賀さん

 

監督が「若く見えて可愛い男性を探した」という王洋役の王一博は、「いま慶応大学の2年生です。撮影当時は学校へ行って現場に帰って、夜、段取りをして、寝て、翌朝また段取りをして撮影、学校へ行って……というのが日常の一環になっていて、楽しい現場でした。王洋はまだ有名ではないアーティストなので、彼の考え方や背後にある美術の歴史などを調べたり、そこは頑張ったと思います。でも監督が“可愛い男性”を探していたとは知りませんでした(笑)」

 

王洋役の王一博さん

 

ジェニー役の呉味子は、監督の中国での大学の先輩で「学校のアイドル的存在」だったとか。「去年、彼女が来日した時にこのストーリーを伝え、一緒にやろうということになりました」と監督。ご本人は、「彼女の映画好きと作品制作の実力は分かっていましたし、楽しそうだったので。普段はカーレースや音楽祭などを企画する仕事しています。演技は全くの初めてなので、気持ちよく監督の指導のままにやりました」と余裕の表情。

 

ジェニー役の呉味子さん

 

3人がそれぞれの形でそれぞれを想い合うという、関係の多様性が印象的だが、作品を作る上で監督はそのあたりをどう意識していたのだろう。「脚本作りは、3人の普段の性格と、キャラクターの人物を合わせるというやり方をしました。3人の関係が密になってきてからまた詳細な部分を直しています。民泊の経営はかなり孤独で特殊な職業で面白いと思いましたし、自分のまわりの中国人や友人たちを観察したり、専門書などで児童虐待などさまざまなリサーチをしてキャラクターを作り上げていきました。脚本を書くとき、真実の愛とは何か、ということをずっと考えていました。2人でも3人でも、男女でも、年齢も関係なく、真実の愛が存在すると思います」

 

旅愁』の次回上映は、7月19日(金)17時から多目的ホールで行われ、ゲストによるQ&Aも予定されている。