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【デイリーニュース】Vol.07 縦型映画シアター「こねこフィルム作品」三野龍一、三野和比古、川口諒太郎、大迫茂生 トーク

縦型動画を突き詰めるのではなく素晴しい映画を撮るのが最終目標

こねこフィルム作品」(前列)大迫茂生/(後列左から)川口諒太郎(こねこフィルムカメラマン)、三野龍一(こねこフィルム ディレクター兼代表)、三野和比古(こねこフィルム企画・プロデューサー兼代表)

 

企画展「デジタルネイティブが視る映像のカタチ」招へい作品のために、多目的ホールに設置された縦型動画を上映する高さ6mの専用大型スクリーン。ここでは様々な縦型動画の上映が行われている。7月20日(日)13時30分から上映されたのは、こねこフィルム制作の『おこがましいっ!厚顔無恥でずうずうしい男』『蟹バ』『自分らしく生きる』『年齢確認の基準がおかしいコンビニ店員』『勝敗はいかに?年齢確認男VSプライド女』『ブランド』の6作品。

 

こねこフィルムとは、映画やドラマで経験を積んだ精鋭クリエイターが、新たな価値を生み出そうと結集したプロフェッショナル集団。2023年6月よりTikTokを中心としたSNSで、毎週2作品を配信し、わずか1年で総フォロワー数100万人を突破。現在、390万人を超えるSNS総フォロワー数を有し、18億回を超える累計再生回数を記録しているという。

 

実は、こねこフィルム代表でディレクターの三野龍一氏は、2021年のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭国際コンペティション部門に『鬼が笑う』が選出された“出身”映画監督でもある。トークセッションには、『鬼が笑う』の脚本を務めた弟で企画・プロデューサー兼こねこフィルム代表の三野和比古氏、俳優の大迫茂生氏、カメラマンの川口諒太郎氏が登壇した。

 

縦型動画を作り始めたきっかけを、龍一監督はこう話す。

 

「『鬼が笑う』の後に、商業映画も撮ったんですが、自分たちの好きな尊敬する役者さんイコール、プロデュース側が言う売れている役者さんではなかったのでキャスティングに苦労したんです。それなら、どうしたらこの素晴らしい役者さんたちを数字的に裏付けることができるのか。そういう発想で考えたのが縦型映像でした。役者さんたちに本名で出てもらっているのは、名前を覚えてもらうためです」

縦型スクリーン前の登壇者とデジたるくん

 

本来、スマートフォンで見ている縦型動画を、縦6mの大スクリーンで見ることを、龍一監督は「想定していない大きさに恥ずかしさもありますが、素晴らしいし、意味のある機会だと思います」と照れ気味。監督の商業映画『近江商人、走る!』(22)のカメラマンも務めている川口氏は、「大画面で見せるつもりで撮っていないので恥ずかしい」という。

 

「クオリティに問題があるわけではないのですが、技術的なこだわりや追い込みをきちんとやっていないので、そこが気恥ずかしいんです」

 

和比古氏は、「こねこフィルムの作品は、スマホで見るからクスっと笑える。覗き込むように見るスマホだからこそ、没入感を持って見られるんだと再確認しました」と語った。

 

既に400本以上のアーカイブを持つこねこフィルム。どうやって脚本を執筆しているのかと問われた和比古氏は、「基本的に台本はないんです」という。

 

「台本がないだけで、演出は当然あります」と龍一監督が補足。「撮りたい画は見えてはいますが、台詞があると、結局読んでしまうので、台詞にとらわれずにそこにたどり着いてほしい。そのため極力、説明台詞を排除し、感情を大切にして、その場で出てくる言葉を使います。本来なら設定だけでも事前に送らないといけないんですが、週に2回配信しているので、もう頭も回らず、スタッフや役者さんのマンパワーに頼っているというのもあります(笑)」

 

自分らしく生きる』を大バズりさせた俳優の大迫氏は、「ものすごく瞬発力が試される感覚。どんどんアクティング・スキルが上がっています(笑)」と現場の様子を明かす。『自分らしく生きる』は、レディースデイのチケットで映画館に入ろうとひと悶着起こすスーツ姿の人と、LGBTQと理解してその人を肯定する映画館スタッフの物語。

 

「あれが、こねこフィルムの作品に参加した1本目。しかも、それまで僕はLGBTQの役をやったことがなかったので、もう自分の中のイメージというか、引き出しから無理やり引っ張り出して瞬発力で演じました」と大迫氏。

 

こねこフィルムというネーミングは、コネクションから取ったのだそう。いろいろな人、もの、企業と繋がりながら、より良い作品を作っていくチームを目指しているのだという。そんなチームの最終目標は、「縦型動画を突き詰めていくことではなく、より素晴しい映画を撮ること」だと龍一監督。

 

「先ほどお伝えしたように、縦型動画はこねこフィルム所属のアーティストの認知度を上げ、一緒に映画を撮るための手段なんです。また役者さんが稼げるようになるのはとても大変だと聞くので、それを変えるためにも縦型動画は必要なんです。役者とは夢がある仕事だと、言い切れるようにしないといけない。今、中国でも200万人ぐらいフォロワーがいるので、そこから世界的に認知されるかもしれない。そういう夢のあるチームにしていきたい。縦型動画を追求するつもりはありません。みんなに知ってもらえるツールとして感謝はしながらも、常に考えていくべきは、映画でどれだけ上に行けるか、国際的な賞を取れるかということ。がんばります」

 

なお、今回のこねこフィルム作品は「縦型映画一挙上映」として、7月21日(月・祝)10時30分および15時50分にも多目的ホールにて上映予定。

 

取材・構成・撮影:関口裕子


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