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【デイリーニュース】Vol.13「短編①」『そこまで一緒に。』『さざなみに揺れる手』Q&A

コンペティション部門トップバッターはワールドプレミアの短編2作品

左から『さざなみに揺れる手』小沢まゆ、川上栄輝監督、『そこまで一緒に。』関寛之監督、戸田昌宏

 

コンペティション部門の上映が22日(火)にスタートし、短編プログラム①の『そこまで一緒に。』『さざなみに揺れる手』がトップバッターを務め、ワールドプレミアとしてお披露目された。

 

上映後、『そこまで一緒に。』の関寛之監督と主演の戸田昌宏、『さざなみに揺れる手』の川上栄輝監督と出演の小沢まゆがQ&Aに登壇。

 

関監督は、「自分も頑張ったし、戸田さん、(共演の)五十嵐(めぐみ)さんにとっても大変な映画だった。誰の目にもふれないと思ったら暗たんたる気持ちになったが、皆さんの目にふれることになって本当にうれしい」。

 

川上監督も「2024年に卒業制作として撮影したが、編集に1年くらいかけた。名誉ある映画祭にノミネートされて感慨深い」と感激の思いを語った。

 

そこまで一緒に。』の関寛之監督(左)と戸田昌宏

 

そこまで一緒に。』は、登山に出掛けた夫婦のような男女にやがてさまざまな違和感が生じ、認知症や生活保護受給の問題などに派生していく物語。関監督は、23年に前作が米国の小さな映画祭に招待され「物凄くうれしくて舞い上がって行ったら、世界の壁の分厚さを痛感した。映画祭のプログラマーやプロデューサーに『私たちはその国の社会問題が見たいんだ』と言われた」ことが制作の端緒となった。

 

書きためていた脚本の中の1本が本作で、「25年には5人に1人が認知症になると言われている問題が含まれていた。自分のレベル的に追いつかないと思ったが、待っていたら二度とできない」と一念発起し、劇団に所属していた時の先輩に当たる戸田に直接出演を依頼。戸田が「脚本を読んだら凄く面白くて、監督がやりたいことを感じ取れた」と快諾し、企画が一気に前に進んだことも明かした。

 

さざなみに揺れる手』の川上栄輝監督(左)と小沢まゆ

 

一方の『さざなみに揺れる手』は、殺人罪で服役していた母親と13年ぶりに港町で一緒に暮らすことになった娘の心の揺れを丹念につむいでいく。川上監督は、「映画を通して家族の優しさをいろいろな角度から描きたかった」と説明。その上で、「是枝裕和監督が好きなので、『海街diary』のような港町を舞台にした物語ができないかと思い、この作品にたどり着いた」と明かした。

 

娘の朱莉役で主演の詩歩と母・葉子役の小沢が港でたたずむラストシーンは、脚本段階では違っていたという。「演技を見ていて、2人とも迷っている中での強さがあるはずだと思い、防波堤に囲まれた中でそのすき間から水平線が見えるカットを撮った。かすかな光が見えるのではないかと思う」と満足げに振り返った。

 

キャストは全員オーディションで選出。1999年『少女~an adolescent』の主演など知られる小沢は、「なかなか難しい役で、撮影に入る前に監督、スタッフを含め何度もリハーサルをした。物語について、自分の役だけではなく他の役に対する考えも話し合えたことで一つのゴールに向かって臨んでいけた。私にとっていい思い出です」と笑顔で話した。

 

取材・構成・撮影:鈴木 元


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