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【デイリーニュース】vol.20 『彼の見つめる先に』 ダニエル・ヒベイロ監督 Q&A

「若いうちからこうした作品に触れてもらい、自分に自身を持っていいんだと勇気づけてあげたい」

ダニエル・ヒベイロ監督

 

 W杯が終わったばかりのブラジルから届いた、長編コンペティション部門ノミネート作品『彼の見つめる先に』。ジャパンプレミアとなったこの日の上映後には、32歳のダニエル・ヒベイロ監督がティーチインの壇上に姿を現し、作品の瑞々しいイメージを裏切らない、若さと爽やかさでも客席を沸かせた。

 

 生まれつき目の見えない高校生のレオナルドは、クラスメイトにからかわれたり両親の干渉に反発しながらも、留学の夢をあきらめずに生きている。幼なじみの少女ジョヴァンナはそんな彼のサポートを一手に引き受けてきた。しかしある日、転校生のガブリエルがやって来たことから、二人の関係に変化が生じる。レオナルドは、新しい世界を見せてくれる彼に惹かれていく。そしてガブリエルもまた、レオナルドに特別な感情を抱き始めていた……。

 

 同性愛というテーマを扱いつつも、自我の芽生えや性への目覚めなど思春期特有の心情をきめ細やかに描き出した本作は、ヒベイロ監督の長編デビュー作ながら2014年のベルリン国際映画祭でプレミア上映されるなど、世界でも注目を集めている。

 

 自身の長編デビュー作として、どうしてもこの物語を撮りたかったというヒベイロ監督。「僕自身もゲイなので、レオナルドとガブリエルの関係は共感を持って描きました。重要なのは観客に若いうちからこうした作品に触れてもらうこと。自分のセクシャリティに悩んでいる若者たちに対しても、それを隠さずに自信を持っていいんだと勇気づけることができます」。

 

 レオナルド役のジュレルメ・ロボは14歳のときにヒベイロ監督に発掘された逸材で、盲目というハードルの高い芝居を見事に体現している。一方ガブリエル役を演じたファビオ・アウディは撮影時に20歳を超えていたが、「二人が一緒にいるとしっくりきた」こともあって選ばれた。

 

 「撮影前には長時間のリハーサルを行いました。セリフは実際に声に出してみてもらって、若い世代の人たちが口にして説得力のあるものかどうかを調整しながら、彼らに変えてもらった部分もあります」。

 

 ブラジルで同性愛を取り巻く環境は、一部からの強い拒絶はありながらも、時代が進むにつれて抵抗は少なくなってきているという。「ブラジルの若い役者にとっても、こうした役柄を演じることは、むしろ今後のキャリアの幅を広げるチャンスになります。一方で、社会が同性愛を受け入れつつあるからこそ反感が激化する側面もありますが、全体的にはポジティブな方向に向かっていると思います」。

 

 ほっこりとした余韻の漂うラストに、幸せな雰囲気に包まれた場内。ティーチインが終わった後も観客がヒベイロ監督に話しかけ、サインを求める光景が見られた。

 

 『彼の見つめる先に』は、7月26日(土)にも14:00から映像ホールにて上映され、ダニエル・ヒベイロ監督のQ&Aも予定されている。


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