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【デイリーニュース】第17回SKIPシティ国際Dシネマ映画祭閉幕

コロナ禍での開催――多様性と変化を感じて

 

 

 

 

次世代を担う映像クリエイターの発掘・育成と映画産業の発展を目的に、2004年に始まったSKIPシティ国際Dシネマ映画祭。17回目を迎えた2020年は、7月に開催が予定されていた東京五輪を避け、当初から9月26日~10月4日に会期が変更されていた。だが、世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、一時はその開催も危ぶむ事態に。例年のように会場で作品を鑑賞する形ではなく、オンライン配信での上映とはなったが、つつがなくクロージングを迎えることができた。

 

応募期間が前年より長くなったこともあり、未曾有の事態にもかかわらず、コンペティション部門には世界各国から長編883本、短編286本、計1,169本という昨年を308本も上回る数の応募があり、その中から国際コンペティション部門10本、国内コンペティション長編部門5本、短編部門9本の計24作品が選ばれた。これらの作品は、9月26日(土)から動画配信サービス「シネマディスカバリーズ」の特設ページで配信された。

 

会場に観客やゲストを迎えることは叶わなかった反面、ノミネート作品の監督インタビュー動画の配信やオンラインQ&Aなどが行われ、家にいながら映画祭に参加することが可能になり、新たな観客も取り込んだ模様。最終日の授賞式と受賞作品の上映だけは、SKIPシティ映像ホールに国内作品の受賞者を招き、リアルな場で授賞式を行った。

 

授賞式ではまず、映画祭実行委員長である大野元裕・埼玉県知事が挨拶した。

「コロナ渦で開催も厳しい状況でしたが、困難は新しい世界への扉であるというエジソンの言葉のように、これまでの伝統からオンラインという新しい形に踏み出したのが今回の映画祭だったと思います。作品はオンラインで今日の授賞式までに6,388名の皆様にご視聴いただきました。自宅で映画体験を共有できる時代に、文化とそれぞれの人々の息吹を伝えていく映画祭としてさらに発展していくことを願っています」

 

続いて国際コンペティション部門の各賞が発表され、海外の受賞者たちの喜びの声と、審査員による評がビデオメッセージで紹介された。

 

【国際コンペティション】

 

最優秀作品賞『願い』
監督・脚本 マリア・セーダル

 

「今朝、ノルウェーの山小屋の自宅で、審査員の方々が私の作品をグランプリに選んでくださったことを知りました。信じられない気持ちですが、このニュースをたいへん光栄に思います。この受賞は私にとって特別なこと。この物語は私の作品の中でも最も自伝的なものだからです。私の個人的な体験を映画作品にするのは、非常にチャレンジングなことでした。賞をいただけたのは、この物語が、感情的にも文化的にも、国境を越えられたからだと思います。少なくとも、そう信じています。たいへん勇気づけられましたし、作品に関わったすべての者が、この受賞を誇りに感じると思います。いつか皆様とお会いできますことを願っています」

 

審査員特別賞『ザ・ペンシル』監督 ナタリア・ナザロワ
監督賞『ザ・ペンシル』監督 ナタリア・ナザロワ

 

「私の作品を高く評価していただき、本当にありがとうございます。日本の詩など、あらゆる日本の伝統的な文化を愛していますので、私にとって、この受賞はとても大きなことです。いつの日か日本を訪れて皆さんにお会いし、私の日本文化への気持ちをお伝えしたいです」

 

観客賞『南スーダンの闇と光』
監督 ベン・ローレンス

 

「『南スーダンの闇と光』が観客賞をいただき、映画祭、そして、観客の皆さんに感謝いたします。滞在していたロンドンから発つ直前の、早朝の空港でこのニュースを聞き、とても驚いています。できれば実際に映画祭に参加したかったのですが……。いつかそれが叶うことを願っています」

 

■国際コンペティション総評 澤田正道(審査委員長)

 

 

「今回の映画祭に選ばれた10本の作品を観て、改めて実感したことのひとつは、女性監督の作品がすでにしっかり根を張っているということ。『女性監督』『男性監督』という言い回し自体が徐々に昔のものとなっていきつつあり、映画には性別などなく、様々な人たちが映画という表現方法を使って世界と対峙していることを見せてくれました。ふたつ目は『戦争』について。今起きている戦争、過去にあった戦争に対する私たちの立ち位置とは、どうあるべきなのか。このテーマを扱う際の責任と覚悟を改めて感じさせられました。三つ目は、どんなジャンルであれ、そこには常に『今』が映し出されているということ。各国の人たちが、どう『今』と接しているのか、とても興味深く観ることができました。短い期間でしたが、学べるものが多かったと感じています。この映画祭が末長く、常に新しい発見の場であり続けるように願っています」

 

【国内コンペティション】

 

国内コンペティション部門は、壇上で各賞の発表とトロフィーの授与が行われ、各受賞者が喜びを語った。

 

SKIPシティアワード『写真の女』
監督 串田壮史

 

「SKIPシティアワードは、次回作へのサポートを得られる賞と伺っているので、ぜひ次回作を作りたいと思います。今年はオンラインで映画祭を楽しみましたが、映画の素晴らしさを再確認する機会となりました。コロナの影響や政治的立場の違いから世界中で分断が広がっていますが、映画的な喜びは、国籍も言葉も文化も性別も人種も超えて、分断された人たちをひとつにすることができると思っています。ぜひ次回作は映像の喜びを皆さんにお届けできるような作品にしたいと思います。『写真の女』は来年劇場で公開されますので、ぜひご覧いただければと思います」

 

優秀作品賞(長編部門)『コントラ』
監督 アンシュル・チョウハン

 

「これは自分にとってとてもパーソナルな作品です。また、日本の社会におけるとてもセンシティブな部分を描いていますが、それがきちんと伝わったことを嬉しく思います。この映画は、岐阜県関市という美しい町で冬に10日間で撮影しました。コロナ渦でオンライン配信されたことで、さまざまな人に見ていただけたこと、たくさんのメッセージをいただけたことも嬉しかった。映画の最後に示されるように、これは(かつて戦地に赴いた)日本の兵士のみなさんに捧げる作品でもあります。来年春に劇場公開されるので、ぜひ劇場の大きなスクリーンで見て下さい」

 

優秀作品賞(短編部門)『stay』
監督 藤田直哉

 

「まず、コロナ渦で映画祭を開催していただきありがとうございます。オンラインだからこそいろいろな人に見てもらえた実感もあるので、オンラインもいいなと思いました。この作品は友人の家を借りて作った作品で、ロケーションが印象的だと思います。脚本もプロデューサーも撮影も大学時代から長年一緒にやってきた仲間たち。彼らとこういった賞を貰うことができて本当に嬉しく思います。ありがとうございます」

 

観客賞(長編部門)『コーンフレーク』
監督 磯部鉄平

 

「SKIPシティ映画祭には3年連続で受賞させていただいて、一年ごとに『SKIPで賞をいただいてくるぞ』という思いで映画を作っています。観客賞はお客さんに選んでいただいた賞なのでとても嬉しいです。これまでずっと一緒にやってきたGON君と作った長編なので、GON君、よかったですね。おめでとうございます。ありがとうございました」

 

観客賞(短編部門)『ムイト・プラゼール』
監督 朴正一

 

「この作品はおそらく今回の入選作品の中で一番の貧乏映画です。どこからのバックアップもなく、お借りした小さいカメラがほぼひとつ、スタッフ、キャストはほぼノーギャラ、気持ちだけで撮りました。その気持ちが多くの方に届いたので観客賞をいただけたんだと思います。スタッフ、キャストのみんな、俺を救ってくれてありがとう。俺の無理を聞いてくれた日系ブラジル人のみんな、あなたたち全員、才能があり素晴らしかったです。これからどんどん表に出て、その才能をあなたたちの第二の故郷である日本のために役立ててください。ガタガタいう人もいると思いますが、おれたち仲間がいますから、応援してます!」

 

■国内コンペティション総評 部谷京子(審査委員長)

 

 

「国内部門の長編5本、短編9本、どれも素晴らしい作品でした。今年の作品の特徴として、多様性の時代ということがあると思います。様々なシチュエーションの中で、なかなか思い通りにいかない人間関係があって、しかし、だからこそ人間は面白い。生きることはもっと面白い。これからもみなさんは、執拗なまでの人間観察を続け、この多様な時代を創造性を持って描いていかれることと思います。今回受賞しなかったみなさんも次回作を大いに期待しています」

 

 

各賞の表彰のあと、土川勉・映画祭ディレクターが挨拶。「今年の映画祭がこのような形で行われるとは、まったくの想定外でした。オンライン配信は初めての試みで、すべて異例ずくめの映画祭となりました。国際コンペティションの審査会はパリ、アムステルダム、東京との間で行われましたが、大きなスクリーンで見てみたかったという声もあり、残念に思い、心を痛めました。来年は本当に本当に参加者全員とこの場でお会いしたいと思います」と来年に向けた熱い思いを語った。

 

最後は、映画祭実行委員会副委員長の奥ノ木信夫川口市長が「来年の成功に向けて川口市としても頑張ります。ここからまた世界に羽ばたく人材が輩出されることを願っています」と話し、授賞式を締めくくった。


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