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【デイリーニュース】Vol.18『長い夜』草刈悠生監督、原田光一、黛果歩、和田紗也加 Q&A
全編ほぼ1シーン1カット! 脚本家から映画監督志望転向した現役大学生の挑戦
『長い夜』左から黛果歩、草刈悠生監督、原田光一、和田紗也加
日本大学芸術学部映画学科に在学中でシナリオを学んでいる草刈悠生監督の初長編映画『長い夜』がコンペティション部門に選出され7月23日(水)、映像ホールで上映された。脚本・編集も兼ねた草刈監督は出演の原田光一、黛果歩、和田紗也加と共に上映後のQ&Aに出席。「長く重い映画を大きなスクリーンで見ていただき、幸福を感じています」と万感の表情で語った。
2年前に海へ消えていった青年への喪失感を抱えながら生きていた恋人と親友が、まさかの再会を経てそれぞれに抱えていた感情がうねり始め奔出していく濃密な人間ドラマ。親友役で主演の原田光一と恋人役の黛果歩とは高校の同窓生という草刈監督は、「原ちゃん(原田)に前の作品で一言二言の本人役で出てもらったら、『今度はもっと重要な役で出せ』と言われたので頼んだ」と冗談めかした。
高校時代、濱口竜介監督の『ハッピーアワー』(2015)を見て「脚本家になりたかったけれど、人生まるごとみたいな映画を作れたらと思うようになった」と監督志望に転身。本作では、ほぼ全編で1シーン1カットに挑戦した。
そのため、観客からは原田と黛の18分に及ぶケンカのシーンに質問が集中。草刈監督によれば、台詞やその間なども俳優に任せた結果だとしたが、原田は「僕は初心者で、演技を学んだ経験もないので、間が空く怖さも感じたことはなく自分なりにやった結果です。ただ、スタッフがセッティングしてくれた場所と時間を無駄にしないよう一生懸命やりました」と胸を張った。
黛も、「エネルギーを一番使ったシーンでした。ケンカなので、ただでさえ雰囲気がピリピリしていたけれど、一人一人が本気だからこそ生まれた時間。任されてしまったので、過去の私を総動員して、似た経験があったらその時の態度や言葉遣いが強く出たかも」と自己分析。2人しか出演していない職業俳優のうちの1人の和田も、同シーンに関し「冷や冷やして怖かったけれど、最高じゃないですか」とべた褒めした。
大学の後輩から「学校で学んだことで、今回の作品に生かされたことは」という質問が出ると、草刈監督は「友人関係の中で面白い映画を教えてもらうなど、コミュニティの中で映画を見る、作るということを学ぶ場。シナリオ専攻では、1シーンごとに起承転結をつけろと言われているので意識しています」と指南。客席には他の共演者やスタッフも多く見られ、「誰か1人でも欠けたら、この映画は完成しなかった。皆でまた違うステージに立てたらうれしい」と意欲を新たにしていた。
取材・構成・撮影:鈴木元