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【デイリーニュース】Vol.02『いもの国風土記』黒川幸則監督、井上文香監督、大橋義一アートディレクター Q&A

川口の鋳物工場のある街並みに突き動かされて

いもの国風土記 第一部水の刻/第二部火の刻』(左から)黒川幸則監督、井上文香監督、大橋義一アートディレクター

 

映像ホールの迫力あるスクリーンと音響で味わいたい新旧特撮の名作や、地域に特化した作品、アニメーションなどを上映するSKIPシティセレクション部門。映画祭初日には、『ゴジラ-1.0』が上映された。

 

7月19日(土)11時から上映されたのは、川口市の地場産業の一つである鋳物工場を舞台にしたドキュメンタリー『いもの国風土記 第一部水の刻/第二部火の刻』。上映後に、黒川幸則監督、井上文香監督、アートディレクターの大橋義一氏が登壇し、Q&Aを行った。

 

本作誕生のきっかけは、イラストレーターである井上監督の絵本「青の時間」だ。以前、井上監督のパートナーである画家・井上実氏のライブ・ペインティングを撮影した黒川監督は、「青の時間」と出合い、絵本に描かれた井上監督の原風景、鋳物工場のある川口・領家に興味を持った。インスピレーションを得た黒川監督は、まず川口・領家を舞台にした劇映画『にわのすなば』(22)を製作。その際に出会った鋳物職人の方々に魅了され、ドキュメンタリーを制作することになったのだという。

 

幼少期、領家の鋳物工場2階に間借りをしていたという井上監督は、
「鋳物工場が立ち並ぶ風景が印象深く、絵本にしました。それをご覧になった黒川監督が、取材してみたいというので、一緒に、大家さんだった鋳物工場を持つ不二工業さんを訪ねました。そこでは今も3日に一度、溶かした金属を鋳型に流し込む“湯入れ”を行っていて、その職人さんたちの仕事ぶりに度肝を抜かれたんです。これはどうしてもドキュメンタリーとして形に残したいと思い、プロジェクトが始まりました」

 

アートディレクターとして本作に関わる大橋義一氏は、本作との奇跡的な偶然を語る。
「私は、グラフィックデザイナーとして、3年ほど前に井上文香さんと知り合いました。すると井上さんが、『今、川口で鋳物工場のドキュメンタリーを撮っている』というんです。実は私のおじ、『キューポラのある街』(62)を撮った浦山桐郎なんです。繋がったなと思い、プロジェクトに参加させていただきました」

 

Q&Aに入ると、客席から短いカットを重ねた編集について質問が出た。黒川監督が参考にしたのは、ジャン・ヴィゴ監督のサイレント映画 『ニースについて』(29)なのだとか。
「短いカットで繋いだのは、展開を早くしたかったというのが一つ。もう一つは、ニースで起きていることをかき集めて20分強のなかで矢継ぎ早に見せた『ニースについて』のように、言葉で説明するのではなく、多くの映像から何かを受け取ってもらいたいと思ったからです」

 

上映されたのは、ドキュメンタリーの第一部「水の刻」、第二部「火の刻」。

 

「第一部を作るにあたり、不二工業社長の入野純一さんからアルバムをお借りし、お話をうかがいました。もちろん事前に様々な資料を読み込んでからうかがったわけですが、入野社長のお話には、そのような書物を上回る臨場感と重みがあった。その時代をリアルに語る方が目の前にいることの興奮を、一緒に味わっていただけるとうれしいです」

 

井上監督もデジカメを片手に鋳物工場を取材した。その中で、「すばらしい発見がたくさんあった」と語る。大橋氏も「例えば、おじの映画を見ていただくことで、言葉だけでなくキューポラを知ることができる。映画が様々な世界を知るきっかけとなれば」という。『いもの国風土記 第一部水の刻/第二部火の刻』は現在、第三部を制作中で、年末か年明けに神奈川大学で上映の予定があるとのこと。鋳物の世界から見えたものをどのようにドライブさせるのか、見守っていきたい作品だ。

 

取材・構成・撮影:関口裕子


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