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【デイリーニュース】vol.09 「短編②」『さまよえ記憶』『猟果』『寓』『勝手に死ぬな』 Q&A

記憶や死、生き方を振り返ることをテーマとした4作品

左から「短編②」の『さまよえ記憶』落合賢プロデューサーと永夏子、『猟果』池本陽海監督と髙野春樹、『』石原理衣監督と小野川浩幸監督、『勝手に死ぬな』天野大地監督と製作の百々保之

 

国内コンペティション短編部門の「短編②」は、『さまよえ記憶』、『猟果』、『』、『勝手に死ぬな』の4本。人の記憶や死、これまでの生き方を振り返ることをテーマとした作品が揃った。上映後のQ&Aでは、監督や出演者たちが登壇しそれぞれの作品について語った。

 

さまよえ記憶』は、数年前に川で行方不明になった息子を今も探し続ける母・詩織と、彼女の大切な記憶と引き換えに「知りたい情報」を提供するという「情報質屋」、ふたりの取引を心配しながら見守る父親の物語。

 

撮影のためこの日の登壇がかなわず「今日行けなくて泣いています」という野口雄大監督に代わって落合賢プロデューサーが作品の背景を語った。

 

「この作品は、野口監督が20代の頃に経験した、実際に友人が失踪してしまったことにインスピレーションを得ています。彼にとってはトラウマのような記憶なんですが、脚本を書いて監督し映画を作ることで、自分の記憶と決着をつけるというか、何か答えを見つけるプロセスだった気がするとおっしゃっていました」

 

「息子と同じくらい大切な記憶」とは何か悩む詩織を演じた永夏子は、「この親子はどういう日常の会話をしているんだろうとか、共通の想い出って何だろうとか、ひとつひとつ本当に丁寧にリハーサルさせていただいて、とても贅沢な時間でした。監督らしい温かい人柄そのままの演出で、丁寧に寄り添っていただいた感じです」

 

猟果』は、亭主関白な夫が妻を連れて山に狩猟に出かけ、娘が同性愛者であることなど様々ないらだちを彼女にぶつけているうちに熊に遭遇、いつも誇りにしている「強さ」や「男らしさ」が崩れてしまい……というちょっとコミカルな作品。

 

池本陽海監督は、「原案は大学時代の友人が書いた10ページくらいの小説『釣果』です。会社の上司と部下の娘たちが恋人関係になって、“僕たちは受け入れていくしかないよね”と言いながら釣りをするという男同士の話なんですが、僕は夫婦の話をやりたかったので、ちょっともらって原案という形にしました」

 

過剰に男らしさを強調する夫・直太朗を演じた髙野春樹は、「今の時代はこういう男性は敵視されると思いますが、監督も自分もああいう男性像を見て育ったので、それを参考にしながら現場で監督と話し合いながら役作りをしました。大変だったのは熊の移動。一生懸命手作りしました(笑)」と作品の肝(?)であるシーンについて話した。

 

』は、死んだはずの姉から届いた手紙を頼りに人里離れた姉・つる葉の家に向かった菊生が迷宮のような世界に入り込む、夢野久作の怪奇小説を思わせる不思議で幻想的な作品だ。

 

石原理衣監督は、「本作のインターナショナルタイトル“Flashback Before Death”には、死の間際の走馬灯という意味があります。人によって見え方は違うそうですが、人は死ぬ間際に生きる術のヒントを見つけ出すため、記憶をフラッシュバックするといわれています。その記憶とか魂を結び付けてミステリーやファンタジーを描ければいいなと思いました」と話す。

 

幻想的な映像やエフェクトについて小野川浩幸監督は、「いろいろな現代アートのアーティストたちにアドバイスをもらったりして、ひとつひとつ細かく作り込んだので、とても時間がかかりました。一番手がかかったのは貝のコマ撮りのシーンです(笑)」

 

石原監督と小野川監督はご夫婦で、「24時間毎日映画の話をしている」のだとか。今回石原監督はつる葉役で出演もしているが、小野川監督とは「現場に入る前にお互いの意思のすり合わせをしているので、現場ではほぼ役に集中して、役者さんの演出も私がしています」とのこと。現場でのすみ分けはきっちりしていたそうだ。

 

勝手に死ぬな』は、交通事故で急逝した父の記憶に特殊な装置を使って潜入し、死の前に父に何があったのかを遺された家族が探ろうとする作品。ここでも「死」や「記憶」が物語の大きな要素となっている。

 

天野大地監督はそれについて、「僕は記憶からスタートしたというより、大切な人との別れを想像する機会が年を重ねるにつれて増えてきたこともあって、死を題材として扱うことにしました。SFとロードムービーとか、異なるものを掛け算したらあまり見たことがない作品になるかなと思い、そのひとつのツールとして記憶の中に入り込めるという設定を考えました。この映画を観ることによって不思議な体験をしてもらいたい、そういう映画を作りたいと思っています。途中から撮り方を変えたり、わざと流れをごっちゃにしたのは、観る人の予想を裏切って、終わる頃には違うレイヤーに持って行きたいという意図もありました」と語った。

 

短編②」の次回上映は7月21日(金)10時30分から映像ホールで行われ、ゲストによるQ&Aも予定されている。オンライン配信は7月22日(土)10時から7月26日(水)23時まで。

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