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【デイリーニュース】vol.14 『バーヌ』監督、脚本、出演のターミナ・ラファエラ Q&A

アゼルバイジャンの領土紛争と母親の親権闘争を重ねて描くヒューマンドラマ

バーヌ』ターミナ・ラファエラ監督

 

国際コンペティション部門『 バーヌ』(アゼルバイジャン、イタリア、フランス、イラン)は、アルメニアとアゼルバイジャンの間に起こった領土紛争の末期を舞台に、社会的権力を持つ夫に一人息子を連れ去られた母バーヌが親権を求めて闘う4日間を描く。上映後、監督、脚本、主演のターミナ・ラファエラがQ&Aを行った。

 

本作は、ヴェネツィア・ビエンナーレが毎年募集している「ビエンナーレ・カレッジ・シネマ」の企画に採択され、15万ユーロ(約2336万円)の出資を受けて製作。昨年のヴェネツィア国際映画祭でワールド・プレミアされ、本映画祭がジャパン・プレミアになる。

 

監督、脚本、主演の3役をこなしたラファエラさんはアゼルバイジャン出身。2015年、同国文化観光省の助成を受けて製作された長編映画『Inner City』の脚本を担当、短編映画の監督などキャリアを重ね、本作で長編映画監督デビューを飾った。

 

「もともとは子どもの親権を求める女性を主人公にした物語を書きたいと思っていました。2020 年に撮影するにあたって、第二次ナゴルノ・カラバフ紛争が勃発し、2つの争いを結びつけることにしました。戦争では女性には選択がない。そこが象徴的だと思いました」

 

観客からは「日本人は外国の領土紛争に興味を持っている人は少ないです」という感想もあったが、ラファエラさんは「それは日本だけじゃありません。私は今、アメリカに住んでいますが、アメリカ人はアゼルバイジャンすら知らない人もいます。世界にはさまざまな暴力に満ちた紛争などがありますが、映画は、今起こっていることを伝える拡声器のような役割があると思っています」と力強い。

 

アゼルバイジャンではインディペンデント映画自体の制作本数は少なく、女性のフィルムメーカーはさらに少ない。本作はアゼルバイジャンでは2回、プライベートな上映会があったが、そのうち1回は観客のほとんどが女性だったという。

 

「戦争でお父さんを亡くされた娘さんが『この紛争は本当に起こすべきだったのか。そんなことを思っても、声を上げる機会がない』と話されていたのが印象的でした。この感想は、私が意図したもの違っていましたが、興味深いと感じました。解釈は見た方に委ねたいと思っていますが、この映画は、誰かをなくした人の声を伝えることになっているのかもしれません」

 

編集は、イランのジャファル・パナヒ監督やハナ・マフマルバフ監督の作品なども担当したイランのプロデューサー兼編集者のマスタネー・モハジェルが務めている。

 

「彼女から学んだことは大きいです。監督第1作だったということもあって、本当に助けてもらいました。絵だけでは伝わっていないこともあって、編集の手を借りる必要があり、映画のビジョンを考える上で大きな成果を与えてくれました」。本作は女性映画人がタッグを組み、女性側の視点からパワフルなメッセージを伝えてくれる。特に、2つの争いの結末を描くラストシーンが印象深い。

 

バーヌ』の次回上映は、7月22日(土)11時から多目的ホールで行われ、ターミナ・ラファエラ監督によるQ&Aも予定されている。オンライン配信は7月22日(土)10時から7月26日(水)23時まで。

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