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【デイリーニュース】Vol.19 『椒麻堂会』特集「中国映画の新境地~KATSUBEN Selection~」トークイベント

新たな中国の才能を紹介する絶好の機会に

椒麻堂会』(左から)森直人氏(映画評論家)、徐昊辰氏(映画ジャーナリスト/活弁シネマ倶楽部)、磯尚太郎氏(配給会社ムヴィオラ)

 

映画祭のオフィシャルメディアパートナーのWEB番組「活弁シネマ倶楽部」による企画「中国映画の新境地~KATSUBEN Selection~」で、チュウ・ジョジョン(邱炯炯)監督の『椒麻堂会』が7月20日(木)、ジャパンプレミアとして映像ホールで上映された。

 

活弁シネマ倶楽部は、映画ジャーナリストの徐昊辰氏が主宰し2018年にスタート。日本では知られていない中国映画などを紹介し、最近では今年5月公開の『私のプリンス・エドワード』など配給にも進出している。

 

今回、徐氏が映画祭側に企画上映を打診し、快諾を得て推薦したのが『椒麻堂会』で、現代アートやドキュメンタリーを数多く手掛けているチュウ監督の初の劇映画。四川オペラの名優が亡くなり、冥界へ向かう道程とそれまでの人生を振り返る回想という二重構造で、1920年代から文化大革命が終わる76年までの激動期を描いた一大叙事詩。21年のロカルノ国際映画祭(スイス)で審査員特別賞を受賞し、翌22年の香港国際映画祭ではヤング・シネマ・コンペティション部門の最優秀賞にあたる火の鳥賞に輝いている。

 

上映後はHDスタジオに場所を移し徐氏、映画評論家の森直人氏、配給会社ムヴィオラの磯尚太郎氏がトークショーを開催。司会を務めた森氏は、「チェン・カイコーの『さらば、わが愛 覇王別姫』とチャン・イーモウの『活きる』を合わせたような映画と聞いていたが、時代背景は同じでも内容や作風は全く違った」と感嘆の表情を浮かべた。

 

中国への留学経験がある磯氏も「冥界の使者が主人公を呼びにくる冒頭から凄くて、見たことのない感動があった。政治への批判や歴史の批評ということではなく、共産党のパロディやブラックユーモアがちりばめられていた」と評価。徐氏は「チュウ監督は77年生まれで、文革を経験していないから距離を置いている。撮る時も歴史を描こうというのではなく、コメディや遊びも入れて映画の形にしたのが斬新。今までの中国映画にはなかった」と解説した。

 

さらに、徐氏は「400㎡のスタジオにセットを建てて、そこですべて撮影しています。小道具なども時代ごとに色が変わったりしているんです。チュウ監督は、フェデリコ・フェリーニ監督に最も影響を受けたと言っています」と説明。森氏は「確かにパンする感じは人工的だった」、磯氏も「リアリズムのある歴史とフェリーニのセット主義の融合は面白いですね」と納得の表情だった。

 

椒麻堂会』の日本での一般公開は決まっていないが、徐氏は今後も他の映画祭などで上映の機会を模索していく意向。さらに、「中国の映画市場は物凄いスピードで世界2位になったが、新しい映画人も活発に作り続けている。これからもできるだけ中国の新しい才能を紹介して、アジアの映画人との交流ももてるようになれば」と夢を馳せた。

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