SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2024

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【デイリーニュース】Vol.21 特集「SKIPシティ同窓会」『ワタシの中の彼女』中村真夕監督、菜 葉 菜トークイベント

映画祭がもたらした大切な出会いを経て

ワタシの中の彼女』ニューヨークからzoomで参加した中村真夕監督、主演の菜 葉 菜

 

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭20周年を記念し、本映画祭から国内外に羽ばたいた監督たちをフィーチャーする特集「SKIPシティ同窓会」。第3弾は、2006年『ハリヨの夏』が長編部門にノミネートされた中村真夕監督。7月21日(金)11時から、4本の短編からなるオムニバス映画『ワタシの中の彼女』が、多目的ホールで上映された。

 

中村監督は、2006年の第3回SKIPシティDシネマ映画祭の長編コンペティション部門に参加。応募した『ハリヨの夏』は、中村監督の監督デビュー作であり、当時まだ18歳の高良健吾の映画デビュー作でもあった。

 

小学校時代を過ごした京都を舞台に青春映画を撮りたいと脚本を書き始めたのは、ニューヨーク大学大学院の映画学科在学中。2003年に帰国し、2005~6年までかけて撮影し完成させた。

 

『ハリヨの夏』の開発期間、並行してさまざまな劇映画のメイキングの仕事をした中村監督。このとき培った技術は、『ナオトひとりっきり』などドキュメンタリー作品に活かされているという。手掛けたのは、市川崑監督『犬神家の一族』(05)などのメイキング。

 

「『ハリヨの夏』では、以前メイキングを撮った作品の現場で出会った片山慎三監督に、セカンドの助監督を依頼し、大阪出身だったこともあって高良さんの方言指導もしてもらいました。たぶん彼の中では黒歴史になっていると思います(笑)」

 

本映画祭のコンペティションに応募した動機は、「賞金」だったという。

 

「当時、確かSKIPシティ国際Dシネマ映画祭の大口スポンサーはソニーさんで、最優秀作品賞の賞金は1,000万円。監督たちはみんな次回作のために、このソニーDシネマアワードを狙って応募したんです(笑)」

 

残念ながら受賞は叶わなかったが、本映画祭は、映画祭が持つ重要な要素のひとつ、“人との出会い”を中村監督にもたらした。

 

「審査員を務めていらっしゃったキャスティング・ディレクターの奈良橋陽子さんとは現在まで続く約20年のお付き合いとなり、大きな収穫をもたらしてくれました」

 

『ハリヨの夏』は、その後、釜山国際映画祭コンペティション部門にもノミネート。デビュー作がコンペにノミネートされるという偉業を成し遂げた。

 

ワタシの中の彼女』主演の菜 葉 菜

 

ワタシの中の彼女』は、2020年に短編映画として発表された『4人のあいだで』など4つの短編からなるオムニバス映画。

 

『4人のあいだで』は、2021年の大阪アジアン映画祭Japan Cuts Awardスペシャルメンション、ニューヨークJapan Cuts映画祭など国内外の映画祭で話題になった。だが短編では劇場公開が難しいため、2021年に短編映画3本を撮り足し、長編映画として完成させた。

 

4作品を通して主演する菜葉菜は、中村監督との出会いをこう話す。

 

「コロナ前、瀬々敬久監督を通じて、中村監督が『会いたい』と言ってくださっていることを聞き、初めてお会いしました。『日本映画には大人の女性を題材にした作品があまりないので、そういうのを撮りたいね』という話をしているうちに緊急事態宣言となり、撮影自体が難しい事態に。それにもかかわらず、占部房子さん、草野康太さんとの短編『4人のあいだで』に声を掛けていただきました」

 

第一話『4人のあいだで』の撮影をしたのは、2020年の7月。最初の緊急事態宣言期間中、Zoomを使った映画が流行り始めた頃、「何か撮りたい」と居てもたってもいられなくなった中村監督が、菜葉菜さんらに声を掛け、始まった。

 

「これを言うと驚かれますが、第一話は夕方5時頃に撮り始めて、6時間ぐらいでアップしたんです。もちろんその前に入念なリハーサルがあったから可能だったわけですが」と中村監督。

 

中村監督が、これを短編のオムニバスにしようと思いついたのは、占部から、濱口竜介監督の『偶然と想像』が、3本の短編を合わせたものだと聞いたためだという。

 

またすべての作品を、菜葉菜主演で描こうと思いついたのは、「菜葉菜さんならいろいろな世代の女性を演じ分けられると思ったから。でも短期間に続けて撮ったので、大変だったとは思います。ウィッグで髪型を変えたりと外見的にも変化させながら、演じ分けてもらいました」

 

第二話『ワタシを見ている誰か』、第三話『ゴーストさん』、第四話『だましてください、やさしいことばで』の3本は、翌2021年の9月頃に撮られた。まだ分からないものへの恐怖に怯えていた時期に撮られた第一話に比べ、渦中を生き抜いて自分たちなりの生活様式を獲得したあとに撮影された二話から四話は、菜葉菜の演じたキャラクターもそうだが、ウイルスに耐性ができたとでもいうように強くなっている。新型コロナウイルスが私たちにもたらしたものを振り返るうえでもぴったりな作品だ。

 

2人はさらに飛躍していく。9月16日からは、横浜の映画館シネマノヴェチェントで、本作を含む12作品が上映される「第2回 女優 菜葉菜特集」が開催される。それぞれの作品の監督を迎えたトークショーも行われる予定だ。

 

文化庁の新進芸術家海外研修制度で、9月10日までニューヨークに滞在中の中村監督は、シネマノヴェチェントでのトークショーにはリアル参加したいとのこと。「今後は日本、アメリカ両方で映画を撮っていきたい」と準備を進めている。

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