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【デイリーニュース】Vol.23 特集「SKIPシティ同窓会」『浅田家!』中野量太監督トークイベント

映画監督としての全てがここから動き出した

浅田家!』中野量太監督

 

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭20周年記念特集「SKIPシティ同窓会」のトリを飾ったのは中野量太監督。2020年の『浅田家!』が21日(金)、多目的ホールで上映された。今年は国内コンペティション長編部門の審査委員長も務めており、「審査で頭がいっぱいですが、凄く刺激をもらって充実した日々を送っています」と笑顔で話した。

 

中野監督は、2012年『チチを撮りに』が長編部門に選出され、日本人として初の監督賞を受賞。SKIPシティアワードも獲得した。

 

「僕にとっての本当の勝負作で、これがダメだったら辞めるくらいのつもりで撮った作品なので、意地でも公開の権利(Dシネマプロジェクト)が欲しかったんです。評判も良く、賞もいただくことができ、映画監督としての全てがここから動き出しました」と振り返った。

 

その時の外国人の審査員が、同作をオランダの大手セールス会社フォルティシモに推薦したことをきっかけに、ベルリン国際映画祭など海外の映画祭も経験。日本での公開が決まり、試写を見たプロデューサーの目に留まったことが16年の商業デビュー作『湯を沸かすほどの熱い愛』につながった。

 

「『チチを撮りに』の試写のとき、『オリジナルで1本、撮りませんか』と声をかけてもらった。絶対に失敗できない。『チチを撮りに』はプロの壁を越えてやろうと作ったが、今度はプロの世界で1本で終わらせないためにはどうするかを凄く考えた。当たらないと次はない。ヒットさせるにはキャスティングも大切。無名の僕が、それを可能にするには面白い脚本を書くしかない。俳優部もそういう脚本を待っているだろうと信じて、2年近く時間をかけました」

 

自信を持って宮沢りえにオファーしたところ、すぐに「会いたい」との申し出があり、初対面で快諾を得た。その後も杉咲花、オダギリジョー、松坂桃李らが続々と決まり「これは興行的にも勝負できる」と確信。事実、スマッシュヒットとなり日本アカデミー賞の6部門で優秀賞(うち2部門で最優秀賞)に輝くなど、その年の映画賞を席巻した。

 

浅田家!』は、浅田政志氏の写真集「浅田家」をベースに東日本大震災のエピソードも絡めた家族のドラマ。日本では興行収入12億1000万円を記録し、フランスでもコロナ禍で2度の延期を経て今年1月に公開され、日本の実写映画としては是枝裕和監督の『万引き家族』に続く観客動員25万人超えのヒットとなった。

 

今後もイタリアでの公開が控えているそうで、「言葉は違っても、映画には国境はないとつくづく思いました。ワールドワイドに、世界に伝わるものを作りたいと思いますね」と意欲も新た。

 

新作に関しては「コロナで休みすぎちゃって……」と自嘲しつつ、「3つほど企画を動かしていて難しい案件ばかりだけど、何とか前に進めたい。(海外との)合作も一度は経験してみたいし、全くのゼロからのオリジナル企画が、もうすぐプロットが上がるところまではきました」と意味深な笑みを浮かべた。

 

トークは19時30分を過ぎて始まったが、熱気であふれた会場では、映画祭を楽しむ観客、および中野監督や『浅田家!』のファン、そして映画祭にノミネートされた監督たちが熱心に聞き入る姿が印象的だった。

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