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【デイリーニュース】Vol.04 『イントゥ・ジ・アイス』キャスパー・ハーロヴ ディベロップメント・プロデューサー Q&A

「地球温暖化は氷河を融かしているか?」の事実をカメラに収めた

イントゥ・ジ・アイス』ディベロップメント・プロデューサーのキャスパー・ハーロヴ

 

国際コンペティション部門出品作『イントゥ・ジ・アイス』は、気候変動問題の実態に、氷河内部を研究する科学者たちの過酷なフィールドワークから迫るドキュメンタリー。7月16日(日)13時50分から多目的ホールでの上映後、ディベロップメント・プロデューサーのキャスパー・ハーロヴが登壇し、この映画の成り立ちや背景を語った。

 

本作では、グリーンランドの氷河の実態を調査する3人の科学者に、ラース・オステンフェルト監督が同行する日々が綴られる。彼らは地球温暖化の実態を読み解くデータを、氷の決壊や猛吹雪といった死と隣り合わせの環境の中で集めていく。

 

その撮影に同行したキャスパー・ハーロヴに、ディベロップメント・プロデューサーという役割を聞くと、「この企画は、監督のラース・オステンフェルトのプロジェクトとして始まりました。僕は資金調達を担当しましたが、予算的に撮影部隊を揃えるまでは届かなかった。結論として、撮影は僕とラースの2人で行っています」

 

キャスパー・ハーロヴはロケに、サウンドエンジニアとして同行しているが、監督が映り込むシーンではカメラもまわしている。

 

「ラースが1人で考え込むくだりや、甌穴の中に入っていくシーンは、僕が撮っています。最初は、取材の過程で出会ったグリーンランドの氷床(広範囲に陸地をおおう氷河)を測定、研究する科学者たちに地球温暖化を語ってもらおうと思っていました。でも撮影を始めるとその体験は思う以上にショッキングなことの連続で、それに驚く監督も含めて撮影することで、観てくださる皆さんに、我々の体験をより身近に感じてもらえると思ったわけです」

 

このドキュメンタリーを作るきっかけとなったのは、徐々に減ってはいるものの、「地球温暖化は起きていない」という否定派も一定数いることだった。にもかかわらず、誰もそれを否定できる状況を目の当たりにした者はいない。

 

「デンマークの夏がかつてないほど暑くても、実際に見たことのない氷河融解の報道との関係性に結びつかない。理論でいわれてもピンとこないなら、自分たちが実際に足を運び、グリーンランドの氷床がどうなっているのかカメラに収めてこようという企画なのです」

 

氷床の上の生活は、思いのほか大変だった。

 

「とにかくサバイブするのが一番大変でした。この映画の登場人物ではありませんが、実際、氷床学者の1人が亡くなる事故も起きています。観測地点に行き着くまでに、ヘリで山脈を越え、降り立ったところから13日間スキーで滑り、荷物も全部ソリに乗せて自分たちで引っ張っていく。身を防護するもののない中、猛吹雪に耐えたこともしばしば。ひと通り訓練は受けましたが、ラースも私もサバイバル経験が豊富なわけではありませんし、登山家のように多くの道具を身に着けての撮影はたやすいことではありませんでした」

 

ただしこの映画は、「地球温暖化において、誰かを糾弾する議論を呼び起こしたいわけではない」とキャスパー・ハーロヴ ディベロップメント・プロデューサー。

 

「その議論では何も動かすことはできないでしょう。地球温暖化に立ち向かうには、全世界がきちんとこの事実を受け止めなければならない。農業従事者、漁業従事者のみならず、エネルギーセクターで働く人、産業を含めてこの事態をきちんと受け止めるべきだと思っています」

 

グリーンランドと南極の氷床が融けた場合、世界中の海抜が17メートルあがるともいわれている。

 

「この映画が目指すのは、そういった事実を訥々と語り、みんなが犠牲になるかもしれない事態の進行を、落ち着いて受け止め、いかにすべきか考える方向に舵を切ろうとする。そうなればという気持ちで作っています」

 

イントゥ・ジ・アイス』の次回上映は、7月19日(水)17時から映像ホールで行われ、キャスパー・ハーロヴ ディベロップメント・プロデューサーによるQ&Aも予定されている。オンライン配信は7月22日(土)10時から7月26日(水)23時まで。

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