ニュース

レポート

プレスリリース

ニュース

授賞結果発表!最優秀賞作品賞はマルタ映画『ルッツ』


SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2021 授賞結果一覧

 

《国際コンペティション》

最優秀作品賞 / Grand Prize

 

 

『ルッツ』

Luzzu

監督:アレックス・カミレーリ

<2021年 / マルタ / 94分>

©Léo Lefèvre

 

審査委員長コメント 竹中直人氏
本当に素晴らしい作品ばかりだったのですが、『ルッツ』がズシンと残っちゃったんですね。船の色合いが可愛かったな。そしてなんといっても俳優のお芝居、見事でした。ほかの作品とは毛色が違う感じというか。
本物の漁師の方々なんですね。でもすごいんだ、芝居がみんな。主人公の男のあの顔つき。表現せずして表現しているというか。表情もそんなに大きく変えることもなく、静かに淡々とお芝居をなさっているのに、ズシっと来るんですよね。
そして街の風景、港、夜のシーン。もうやんなっちゃうくらいにすごかったな。ほかの作品も本当に素晴らしいのに、最高なのに、『ルッツ』はグウッと心に残っちゃうんですよ。それが正直な意見かな。『ルッツ』はとにかく好きな映画だったということです。心に深く残った映画でした。
ひと言でまとめるのはとても難しいんですが、どこかハードボイルドなんですよね。とてもセンスの良い映画だなと思いました。監督の眼差しが、ねちっこくなく、クールでいて熱い。それがたまらなかったと思います。『ルッツ』、最高の映画でした。ありがとうございました。

 

受賞コメント アレックス・カミレーリ監督

グランプリの受賞は本当に素晴らしいことで、優れた映画製作チームにも感謝の意を表します。私たちにとって、グランプリ受賞の知らせ以上の喜びはありません。マルタにいるスタッフたちも喜んでいます。私たちは、この作品を、たくさんの愛と信念を持って作りました。小さな場所の小さな物語が、遠い場所まで届くことができると信じていました。今回の受賞によって、その信念に間違いはなかったと思いました。私は人生と映画について、多くの偉大な日本の監督たちから学びました。ですので、私の映画人生の第一歩を、日本の皆さんと共有できたことはたいへん光栄です。数年後、次の作品を再び日本の皆さんにご覧いただけることを願っております。

 
 
 

監督賞 / Best Director

 

『ライバル』

Rival

監督:マークス・レンツ

<2020年 / ドイツ、ウクライナ / 96分>

©Mila Teshaieva

 

審査員コメント 船戸慶子氏
今回、監督賞を受賞したマークス・レンツ監督の『ライバル』は、子供が主人公でありながら一切の甘えや優しさを交えず、東ヨーロッパのひとつの現実をある種生々しく切り取ってドラマとして成立させた、監督の手腕が際立った作品でした。
一方、男の子が最初に恋をするのは母親であるという、エディプスシンドロームについても考えました。作品の中の少年の母親はこの上なくチャーミングで、彼女を好きになるドイツ人の中年男にライバル心を燃やす少年の気持ちが痛いほど伝わってきます。ただ、彼を守ってくれる大人が誰もいなくなった時、少年は自らを奮い立たせ、自分の足で歩いて行かなければいけない。
作品を通して、彼の存在感と、物言わぬ主張に圧倒されました。そんな難しい役をこなした子役俳優、映像の美しさ、サウンド効果も含め、監督賞に値する作品だと思いました。おめでとうございます。

 

受賞コメント マークス・レンツ監督

今回、遠く離れた国で、監督賞を受賞しましたこと、本当に驚いています。この作品は、完成に5、6年を費やし、皆で必死に作り上げました。私は今、映画の持つ感情やストーリーが地球のほぼ反対の土地でも届いたのだと、実感しております。審査員の皆様、観客の皆様、作品を選出してくださった映画祭の皆様に、感謝申し上げます。いま私は、火山が噴火したカナリア諸島で、まさに噴火の様子を撮影しています。今回の受賞によって、私の中には、熱いエネルギーと炎が燃えています。ありがとうございました。

 
 
 

審査員特別賞 / Special Jury Prize

 

『シネマ・オブ・スリープ』

Cinema of Sleep

監督:ジェフリー・セント・ジュールズ

<2021年 / カナダ / 105分>

©Inferno Pictures

 

審査員コメント マギー・リー氏
『シネマ・オブ・スリープ』は、ジャンル映画のスタイルを使った斬新な手法で、難民の人道的危機について描いた作品です。本作品にはたくさんの知的な仕掛けが施され、最後には驚きの感動的なエンディングが待ち受けています。またこの作品は、映画好きにはたまらないクラシック映画のオマージュでもあります。

 

受賞コメント ジェフリー・セント・ジュールズ監督

私の作品は、国境や大陸を越えた人間の共通性について、映画を通して描くことを試みました。現在は、実際に日本を訪れて皆さんに会うことはできませんが、私たちの映画を、アイデアを、そして心を共有することができたことを嬉しく思います。そして、このような状況においても、映画祭を通じて、国際的に映画による交流を図ることができたことに感謝しています。

 
 
 

審査員特別賞 / Special Jury Prize

 

『ミトラ』

Mitra

監督:カーウェ・モディーリ

<2021年 / オランダ、ドイツ、デンマーク / 106分>

©Jurre Rompa

 

審査員コメント 志村大祐氏
今年の審査員特別賞は審査員の意見が2作品に分かれました。
本来ならどちらか1作品を選ぶべきなのでしょうが、2作品がまったく異なるアプローチの作品でしたので、2作品同時受賞となりました。そのうちの1本が『ミトラ』です。
1982年のイランで起こった悲劇と37年後の現代を結ぶ、いわゆる復讐劇ですが、構成が非常に巧みで、グイグイと物語に引き込まれる力のある作品でした。モディーリ監督は長編2作目ですが、重厚さと洗練さを兼ね備えており、アスガー・ファルハディ監督の諸作品や、アトム・エゴヤン監督の『手紙は憶えている』、コスタ=ガヴラス監督の『ミュージックボックス』といった社会派サスペンスの系譜に連なる作品だと思います。
4人の主要キャラクターがステレオタイプに陥らずに、とても陰影に富んだ、魅力的なキャラクターとして描かれています。カーウェ・モディーリ監督、これからも期待していきたい監督だと思います。

 

受賞コメント カーウェ・モディーリ監督

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭で審査員特別賞を受賞しましたこと、たいへん光栄に思います。これほどの喜びはありません。作品を選んでくださった映画祭の皆様、そして、もちろん審査員の皆様にもお礼を申し上げます。日本を訪れて映画祭に参加したかったのですが、現在の状況で叶いませんでした。しかし近い将来、状況が好転した際には、素晴らしい映画という芸術を、皆で集い、満席の劇場で祝えることを願っております。

 
 
 

観客賞 / Audience Award

 

『国境を越えてキスをして!』

Kiss Me Before It Blows Up

監督:シレル・ぺレグ

<2020年 / ドイツ / 105分>

©Fireglory Pictures GmbH

 

受賞コメント シレル・ぺレグ監督

たった今、私の作品『国境を越えてキスをして!』が観客賞を受賞したと聞きました。観客の皆様から高く評価していただいたこと、たいへん嬉しく、光栄に思います。日本の皆様に届くとは考えておりませんでしたので、とても嬉しいです。本当にありがとうございます。私の作品を楽しんでくれたと知り、うきうきしています。ありがとうございました。

 
 
 

国際コンペティション 審査委員長 
竹中直人氏 総評
10本の作品を観させていただきました。どれもこれも本当に素晴らしい作品で、一本一本に感情移入してしまいました。
俳優さんの芝居もとても素晴らしく、一人一人の俳優がその映画を愛して、その映画にしっかりと存在して呼吸をしている。どれも魅力的な、素敵な映画ばかりでした。
監督の眼差しも、とても、とても鋭くて、それでいて優しくて、綺麗で。みんなみんな素敵な映画ばかりで、審査なんてやはり僕には向いていないなと思いました。どれも最高の作品でした。またいつか皆さんの作品に出会えることを楽しみにしています。ありがとうございました。

 
 
 

《国内コンペティション》

SKIPシティアワード / SKIP CITY AWARD

 

『カウンセラー』

Psychology Counselor

監督:酒井 善三

<2021年 / 日本 / 42分>

©DrunkenBird 2020

 

審査委員長コメント 國實瑞惠氏
酒井善三監督は「面白いとはどういうことか」ということに興味があり、その発見と実験自体を面白く感じながら好きで作っていると語っています。この作品は今までの日本ホラーにない、人間をえぐることで観客を引き込むポテンシャルの高さを感じました。まさしく、面白さにハマりました。

 

受賞コメント 酒井善三監督

素晴らしい作品ばかりの映画祭にお招きいただいたのみならず、恐れ多くも賞までいただき大変光栄に思います。『カウンセラー』は意義とか、そういったものはありません。キャラクターや物語に、これといった価値観や倫理観を代表させてもいません。そのためご覧になる方によって、あるいはご覧になるタイミングによって、まったく別のものを受け取られるのではないか、そうであるといいなと思っています。

 
 
 

優秀作品賞(長編部門)/ Best Picture (Japanese Feature Category)

 

『夜を越える旅』

Journey Beyond the Night

監督:萱野 孝幸

<2021年 / 日本 / 80分>

©夜を越える旅フィルムパートナーズ

 

審査員コメント トム・メス氏
この作品は脚本のバランスがとても素晴らしいです。また観客の心理を見事に操っています。そしてシンプルな映画表現が、観客に強い印象を与えていることに非常に感銘を受けました。萱野監督、そして『夜を越える旅』のスタッフ・キャストの皆様、おめでとうございます。

 

受賞コメント 萱野孝幸監督

本当に恐れ多いのひと言なんですが、まずはクルー、キャストに最高の報告ができたことをうれしく思います。この賞をいただいたことは『夜を越える旅』にとって最大の事件ですし、ある種の始まりだとだと感じましたので、これから精進していきたいと思います。

 
 
 

優秀作品賞(短編部門)/ Best Picture (Japanese Short Category)

 

『リトルサーカス』

A Little Circus

監督:逢坂 芳郎

<2021年 / 日本 / 27分>

©Yoshiro Osaka

 

審査員コメント 髙橋泉氏
逢坂監督ならびにスタッフ・キャストの皆様おめでとうございます。すごく意義のある映画だったと思います。コロナ禍といっても、僕らは主要都市や感染が爆発している地域のことしかニュースで見られない中、カンボジアのサーカス発祥の地という、あまり縁のない町にカメラが降りてくれたことで、自分のことも省みる時間になったと思います。エネルギーがすごく、躍動感に満ち溢れている。
逢坂監督はこの不遇のサーカス学校の現状を伝えたいと思っていて、もちろん僕もこの映画がその一助になればいいと思いつつ、それ以上に僕は「コロナごときでは青春はぶった切れない」と思いました。やりたい気持ちは消せないぞと。それはこのカンボジアのサーカス学校の話が特別なのではなくて、何かに打ち込む情熱はコロナなんかに負けないし、もっと言えば僕ら大人だって、という気持ちになれました。
半径3メートルの悩みを、半径3メートルの中で描くような作品が多い中、遠くの世界との対比で描いているという意味で、優秀作品賞に推せる作品だったと思います。逢坂監督が次にどんな題材に出会って、どんな眼差しで切り取っていくのか、すごく楽しみにしています。

 

受賞コメント 逢坂芳郎監督

本当に素晴らしい作品ばかりが集まるコンペティションの中、ふたつの賞をいただけることは信じられない思いです。この作品は実際にコロナ禍で苦境にたっているカンボジアのサーカス団に寄り添い、制作しました。身体を使って生きる力や喜びを表現するカンボジアサーカス団は、舞台上でも舞台の外でも眩しいほどにたくましく、笑顔にあふれています。そのエネルギーを、この映画を通じて日本の皆さんに少しでも伝えられればという思いで制作しました。この賞は、私が、美しく生きる人たちに出会い、囲まれ、支えられて作った結果です。皆とその喜びを分かち合いたいです。最後に、映画という芸術が人々の生きる力になり続けることを願い、この映画祭に関わった皆様 すべてに感謝の気持ち、そしてこの映画祭を目指した映画制作者への尊敬の念を持って受賞の挨拶に代えさせていただきます。

 
 
 

観客賞(長編部門)/ Audience Award (Japanese Feature Category)

 

『夜を越える旅』

Journey Beyond the Night

監督:萱野 孝幸

<2021年 / 日本 / 80分>

©夜を越える旅フィルムパートナーズ

 

受賞コメント 萱野孝幸監督

本当に光栄です。かなり不可思議なものを作ってしまったんじゃないかという自覚がありましたので、大勢の方に楽しんでいただけたのかなということが、本当に励みになりますし、純粋にうれしいです。ありがとうございます。

 
 
 

観客賞(短編部門)/ Audience Award (Japanese Short Category)

 

『リトルサーカス』

A Little Circus

監督:逢坂 芳郎

<2021年 / 日本 / 27分>

©Yoshiro Osaka

 

受賞コメント 逢坂芳郎監督

コロナ禍をテーマにした映画だったということで多くの方が興味を持って、ご視聴いただけたからではないかと思っています。私自身、コロナ禍においてニュースが異を唱え合い、真実を失ったような社会に心苦しく感じていました。ですので、映画では自分が見て知っている範囲内で、真実味のある映画を目指しました。映画に登場するサーカス少年たちはコロナを悪とはみなさず、友情を強く持ち、ただ前向きに自分たちにできることを続けます。現在もまだサーカスは閉じたままですが、彼らは今日も元気です。サーカスが再開すれば彼らは有り余ったエネルギーを舞台で披露する姿が想像できます。この映画を見てくださった方がいつか彼らの舞台を見にいくことがあればこれほどない喜びです。

 
 
 

国内コンペティション 審査委員長 
國實瑞惠氏 総評
2021年のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭 国内作品部門では、アニメ作品をはじめ、色々なジャンルの作品が並び、大変面白く楽しませていただきました。その中でも、このコロナ禍の中で海外撮影に臨んだ作品には、希望と強いエネルギーを感じました。
かの今村昌平監督は「人間は、汚濁にまみれているものか、ピュアなものか、うさんくさいものか、助平なものか、優しいものか、弱々しいものか、滑稽なものかを真剣に問い、総じて、人間とはなんと面白いものかを知り、そしてこれを問う己はいったい何かと考えてほしい」と語っています。
私たちの前には「わたし」と「あなた」だけではなく、広い世界があり、うごめく人間たちが生きています。
広い世界と自分を考え、意識して映画作りをしていただきたいと思います。今回受賞に至らなかった作品も含め、映画を志す人たちの活躍に大きな希望を持っています。このコロナ禍において、皆さま制作作業本当に大変だったと思います。お疲れ様でした。

 
 


TOP