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Daily News Presented by Variety Japan

2010年7月23日

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2010スタート

オープニング作品は山田洋次監督の名作『幸福の黄色いハンカチ』デジタルリマスター版

 埼玉県川口市のSKIPシティで23日(金)、第7回SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2010がスタートした。

 コンペ部門には、85の国と地域から、長編部門に648本(海外578本、国内70本)、短編部門に162本、計810本の応募作品があり、そのなかで一次審査を通過した計22作品(長編部門12本、審査対象外1本、短編部門10本)がグランプリを競う。
 
 また、オープニング作品としてデジタルリマスター版『幸福の黄色いハンカチ』が上映されたほか、デジタル撮影でオペラや歌舞伎の舞台をクリアにとどめた『Livespire ミラノ・スカラ座オペラ「椿姫」』や『怪談 牡丹燈籠』、3-D作品『くもりときどきミートボール』など様々なデジタル作品が紹介される。

 映画祭が始まった7年前、まだ映画産業のなかでデジタルが果たす役割は小さかった。しかし映画館のデジタル化がグローバルで進み、3-D映画が映画興行の重要な収益要素となった今、デジタルはあたりまえのように映画と併走している。

 デジタルをうたう「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」はそんな現状に対し、新たなるデジタルの使命を明確にした。デジタル化による映画作品のアーカイブおよび再リリースという使命だ。

 「昨年、黒澤明監督の『羅生門』をデジタルリマスター版でご覧いただきました。今、貴重なネガをデジタルに変換し、もう一度皆さんに名画をご覧いただこうという動きが活発になっています。これは大変素晴らしいことで、上映のチャンスが減っている作品を、多くの方に見ていただくことができるわけです。今回もデジタルリマスター版の『幸福の黄色いハンカチ』を上映しますが、30数年を経てあのハンカチの黄色を、鮮やかによみがえらせることができたと思います」と瀧沢裕二映画祭ディレクターはオープニングのあいさつで語った。

 今回、デジタルで上映された同作には、当時の文化、社会情勢、人情が丁寧に描かれている。上映前のあいさつに立った山田洋次監督は、「この映画を撮ったころにはデジタルなんてありませんでした。ですので、映画がニュープリントのように生き返る技術に本当に驚いています。この映画には、今とはずいぶん違う夕張が映っていて、まだ、たくさんの人があの炭鉱で働いていました。この国は短い間に、こんなにも変わってしまった。デジタル化にあたって見直し、そう思いました」とデジタルリマスター版の感想を端的に述べた。

 そして当時を懐かしむように、「先日、一緒に見た桃井かおりさんが、『あれはまだ偉そうに人に説教する前の(武田)鉄矢よね』と笑っていたけど、そういう彼女もとても若かった。当時、僕はまだ芝居をのみ込めていない武田さんに、何度も駄目出しをしたんです。若かった武田さんは夜、一人涙をこぼしていたそうで、それを高倉健さんが『監督は見込みのない奴はいじめない』となぐさめたとか。いや、僕だっていじわるしたわけじゃないんだ(笑)。一人の若者の確固たる個性をちゃんと見せたかっただけで」と撮影時のエピソードも披露した。

 同作品はデジタルリマスター版のほかに、『イエロー・ハンカチーフ』としてアメリカでリメイクもされている。そんなに「愛されるゆえん」を問われ、原作であるピート・ハミルの掌編“Going Home”が普遍的な作品だからだと話す山田監督。その語り口も素晴らしく、まさに映画を見ているかのようだと思っていたら、「ほら、イメージがはっきり浮かぶでしょう。物語には、映画になりにくいもの、なりやすいものがある。でもこの作品は、まるで花を思い浮かべるように、誰の頭にもイメージが浮かび上がるんです。それも愛される理由」。

 最後に、メッセージをこわれた山田監督は、なかなか作品の公開が決まらず、また公開規模も小さくなりがちな若い監督たちに対し、「予算の関係でできないこともあると思いますが、映画は大きなスクリーンでみんなで共有するもの。それを忘れずに」と激励の言葉を贈り、オープニング上映をスタートさせた。

 会期は、7月23日(金)から8月1日(日)まで。

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