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Daily News Presented by Variety Japan

2010年7月24日

民間伝承の物語に新しい発想を持ち込んだ『マジックシルバー』

ラウニング監督とユートハウグ監督がノルウェーの伝説の小人ノームに込めた思い

 昨日から始まった7回めを迎えるSKIPシティ国際Dシネマ映画祭2010。いよいよ今日からコンペティション部門参加作品の上映が始まった。まず先頭を切ったのは、ノルウェー映画『マジックシルバー』だ。


 雪に覆われた山の上に住む小人たち、青いノームの幼い姫君が、父王の病を治したい一心で初めて外の世界に足を踏み出すが……というファンタジー・ストーリー。とんがり帽子を被った青いノームたち、彼らが大切に管理する“マジックシルバー”、そしてそれがつかさどる昼と夜など、映像の美しさにまず目を奪われる。監督のカタリーナ・ラウニングとローアル・ユートハウグが、映画上映後の質疑応答で、観客からの質問に答えつつ映画について語った。

 「ノームは、ノルウェーの民間伝承のなかでもとても重要な存在です。自分たちの文化を素敵な物語として映画化できて嬉しく思っています」とラウニング監督。ユートハウグ監督は、「伝説では、普通ノームは家畜小屋の屋根裏に住んでいるものなんですが、山の上に住む青いノームというのはこの映画の、ノルウェーならではの新しい発想です」と説明する。
 

 家畜小屋に住む伝統的な赤いノームたちも登場するが、彼らの世界に青いノームの少女が入り込んだことから種族同士の対立も起こる。ラウニング監督は、「ここを描くに当たって、現実に起こっている国家や人種間の争いも当然意識しました。青と赤のノームは掟も食べるものも違うけれど、お互いに少しずつ協力し合うことで問題を解決できるのだ、という思いを込めています」と話す。

 赤いノームは人間に近く、青いノームはより自然に近いという。ノームの住む山はほぼすべてセットで撮影したとユートハウグ監督は言うが、ラウニング監督によると「青と赤というのは同じ画面に美しく収めるのが困難な色なんです。ですからプランニングやスケッチを丁寧にやりました。自分たちの作り上げた世界に観客をいざなうことができるのが、映画作りの醍醐味。そのために美術や衣装にもかなり凝りました」。

 ノルウェー国立映画学校で出会って以来コラボレーションを続けているというラウニングとユートハウグ監督。実際の撮影では、役割をどう分担していたのだろう?

 「私は俳優担当、彼は撮影監督担当」とラウニング監督。「プリプロダクションの段階から、それこそ糊でくっついたみたいにずっと一緒にコンセプト、キャラクター、アートワークを練り上げていき、一緒に参考映画も見ました。30日間で撮り上げなければならなかったし、シーン数も出演俳優も多かったので、撮影中に役割をはっきり分けたことはとてもよかった。1人ではとてもできなかったと思います」。ポストプロダクションはまた2人一緒に進めていったという。


 一目見て決めたという主人公の子役2人のキャスティングのこと、ほとんどがセット撮影だったこと、ノームの食べ物のこと――様々なことを語った2人。ここでも、どちらかというと口べたな印象のユートハウグ監督の回答をラウニング監督が補うという、絶妙のコンビネーションを見せてくれた。
 

 『マジックシルバー』の次回上映は26日(月)15時30分から。作品情報と監督プロフィールはこちら

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