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Daily News Presented by Variety Japan

2010年7月28日

イラク戦争ですべてを失った人々の怒りと悲しみを描く『闇への一歩』

「映画は最もパワフルに問題提起ができるメディア」とトゥル・イナッチ監督

 SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2010の6日目、イラク、トルコ合作映画『闇への一歩』が上映され、これでコンペティション出品作がすべて出揃った。

 イラク北部の村がアメリカ軍に襲撃され、少女ジェネットは家族全員を失った。唯一残された兄を頼って町に行くが、兄は爆破テロで重傷を負い、トルコの病院に搬送されたという。失意の彼女は何とか兄を探し出そうと、トルコに密入国する一団に加わるのだが……。

 戦争で全てを失い、大きな怒りと悲しみを抱えて生きる市井の人々をリアルに描いたアトゥル・イナッチ監督は、「政治を取り込んだ映画を作っていきたい」と上映後のQ&Aで語った。

 「イラク戦争が起こった時、私はアメリカにいましたが、何かしなければと思いました。映画は最もパワフルに問題提起ができるメディア。使命感と責任を感じました。これは戦後のイラクで実際に撮影を行った数少ない映画で、トルコの南東やイスタンブールでも撮影しています」。

 撮影に際しては、「常に危険はあったけど、大きな問題は起こらなかった」とか。

 映画は、兄を探すうちイスラム武装勢力に巻き込まれていくジェネットの姿を追うが、ラストはさまざまな見方ができるように作られている。

 「我々の住む世界は、すべてはっきり白黒つけられるものではありません。日常的に暴力にさらされると、人は希望も理性も失ってしまう。アメリカ兵が悪というわけではなく、どちらも被害者にも加害者にもなり得る。特に中東問題は複雑ですし、表面的でない、目に見えるものの裏側を描きたかったんです」。

 主演のスザン・ゲンチはもともとプロの俳優ではないが、本作を機会に女優の勉強を始めたという。

 『闇への一歩』の次回上映は、7月31日(土)11時から多目的ホールにて。作品紹介と監督プロフィールはこちら

 

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