文字サイズ



Daily News Presented by Variety Japan

2010年7月27日

スラムの少年たちを温かく描く『鉄屑と海と子どもたち』

「この映画がスラムの現状を社会に訴える手段になれば」とラルストン・G・ホベル監督

 SKIPシティ国際Dシネマ映画祭の4日目、最後の上映はコンペティションに出品されているフィリピン映画『鉄屑と海と子どもたち』。

 マニラ湾岸のスラム街、バセコ。ここでは子どもたちが違法な素潜りを繰り返し、海底から鉄屑を集めては金に換えていた。だがある日、仲間と海に出かけた少年ブンガルの行方がわからなくなってしまう。親友のウトイは海や街を必死に探しまわるのだが……。

 汚れた海、散乱するゴミ、危険なダイビング、金のために臓器を売らざるを得ない貧しい暮らし。そんな惨状を背景にしながら、少年たちの友情をどこか牧歌的、そして幻想的に描いたラルストン・G・ホベル監督は、ドキュメンタリー出身。子どもたちの演技があまりに自然で、ドキュメンタリーかと錯覚してしまいそうになる。

 「キャストの子どもたちは全員、実際にあのコミュニティに住むメタルダイバーです。6カ月間にわたるリサーチを行い、彼らが人魚伝説や両親について自然に話す様子を取り入れて脚本を書きました。そして子どもたちとワークショップを行い、150人をオーディションして主役を選びました」。

 学校に通っていない子どもが多いため、プロデューサーは撮影中にソーシャルワーカーと教師を呼び、彼らに読み書きを教えたという。

 「子どもたちは学校に行くより両親を助けたいと考えているのです。危険なダイビングや児童の不法労働、臓器売買は現実に行われていることですが、隠れて行っているためにほとんど知られていません。この映画は、そういった事実を社会に訴える手段になると考えていました。現在は生活支援プログラムができるなど、少しずつ改善しています」。

 撮影前には字が読めず、セリフも口頭で覚えたというウトイ役の少年が、「12月の撮影終了後にクリスマスカードを送ってくれた」と監督は嬉しそうに話してくれた。

 『鉄屑と海と子どもたち』の次回上映は、7月31日(土)14時30分から多目的ホールにて。作品紹介と監督プロフィールはこちら


 

デイリーニュース



© SKIP CITY INTERNATIONAL D-Cinema FESTIVAL Committee. All rights reserved.